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この文章で筆者が最も言いたいことは何か。


1.かなり前のことですが、若い友人の作家がぼくにピアノを習いませんか、とすすめたことがありました。
 「五木さん、ごらんなさい。ピアニストはみんな驚くほど長命でしょう?それにいつまでもボケません。あれは両手の指を同時に動かすことが肉体と精神にすばらしくよいということの証拠なんです。」

 ぼくは彼の言葉には賛成でしたが、今さらバイエル(注1)をさらう(注2)気もせずに笑って辞退しました。
 しかし、彼の言葉は正しいと思います。ピアノだけではない。絵を描く人だって、ロクロをひく(注3)人だって、みんな長生きで元気です。ことに彫刻家はすごい。

 手を使って何かをすることは、人間にいい影響をおよぼすんですね。しかし、それだけではないんじゃないか。

 手を使うだけでなく、手がよろこんでいることが大事だとぼくは思うのです。ピアノを弾くことは指にとってもよろこびです。彫刻も創造的な作業です。絵を描くのも、ロクロをひくのも、みんな創造的なよろこびがある作業です。

 ただ指を運動させる、ということとは少しちがうものがそこにはありはしないか。トレーニングとして機械的に指の訓練をすることも悪くはないでしょう。しかし、それだけではなにかがたりない。そうです。よろこびをともなってこそ、指は人の生命をいきいきとよみがえらせるのだと思います。

                   (五木寛之『生きるヒントー自分の人生を愛するための 12 章』角川書店)
(注1)バイエル:ピアノの初級テキスト
(注2)さらう:復習、練習する
(注3)ロクロをひく:円形の道具を回して茶わんや花瓶などを作る

  • 1 、芸術家は両手の指をいつもよく動かしているので、長生きである。

  • 2 、機械的に指を動かしていれば、創造的な仕事が生まれ、長生きすることもできる。

  • 3 、指を動かすことが人にいい影響を与えるには、それにともなうよろこびが必要である。

  • 4 、指のトレーニングをすることは、人の肉体と精神にいい影響をおよぼす。

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この文章で筆者が最も言いたいことは何か。


2.日本では、人気の美術展に行くと一番混んでいるのが、入り口の作家の略歴とか解説ボードの前です。入場者はまずここで作家の立派な略歴や作品のすばらしさという能書き(注1)のシャワーをあびて、その通りありがたく鑑賞するのです。そんな人が次にたち止まるのは教科書に出ている名画とかパンフレットに掲載された作品の前で、見終わった後には話題の「〇〇展」を見てきましたという事実が残るだけです。これでは本当の鑑賞ではなく、単に決められた通りの観光
コースを見学してきただけの旅行者と同じです。

 評価の定まった作家、人気の作品というのは当然専門家が選んだものであり、その意味で価値のあるものには違いないのですが、それでは単なる追体験に過ぎません。自ら主体的に鑑賞したいならば、まず入り口の略歴とか作品の解説を見る前に作品そのもを観てまわり、自分が好きな作品があったら解説を読み、最後に略歴などをみて理解を深めるという見方をしてみてはどうでしょうか。

                               (山本冬彦『週末はギャラリーめぐり』筑摩書房
(注1)能(のう)書(が)き:薬などの効果を示したもの。ここでは、優れた点を並べた言葉。

  • 1 、美術展にある、作家の紹介や解説は役に立つもので、旅行の観光コースでただ見ていただけ の絵が、より深く理解できる。

  • 2 、美術展を主体的に見るために、まず作品を観てから、好きな作品の解説を読み、略歴を読む ことをすすめる。

  • 3 、美術展では、自分の感受性で気に入った作品を観るべきであり、作家の紹介や解説などは見 る必要はない。

  • 4 、美術展では、入口の解説の前は混んでいるため、先に作品を観て、次に解説を読み、略歴で 理解を深める方が効率的である。

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この文章で筆者が最も言いたいことは何か。


3.「食べるために働く」という言葉があります。人が生存していくには、やはりお金がかかるのであり、お金を得るためには、やはり働かなくてはなりません。いまはさらに「働き甲斐」や
「夢の実現」などが働くことの大きなファクター(注1)になっていますから、仕事があって、それが自分のやりたいことと一致していれば、言うことはないわけです。

 でも、現実にはなかなかそうもいかなくて、目の前にあるのは希望とはまったく違うものだけれども、転職するのもたいへんだから、いやいや会社に通っているという人も多いでしょう。子供がいる人などはなおさら自分勝手(注2)もできず、毎日が我慢の連続かもしれません。ときには「お金さえあったら好きなことができるのに」「誰かオレを養ってくれないかな」という気持ちになることもあるのではないでしょうか。

 ときどき「もし宝くじで三億円が当たったら、仕事をやめて遊んで暮らす」という言葉を聞くことがあります。たしかに、お金さえあれば働かなくていいような気がします。しかしーーと、そこで私は考えるのです。もしお金があったら、人は本当に働くのをやめるでしょうか。案外、そうでもないのではないでしょうか。

                                        (姜尚中『悩む力』集英社)
(注1)ファクター:要素
(注2)自分勝手:他人のことは考えず、自分の思いどおりに行動すること。

  • 1 、人が働くのは収入を得るためだが、お金があっても、働き続けるだろう。

  • 2 、人はやむを得ない理由で働いており、お金がたくさんあったら働かないだろう。

  • 3 、子供がいる人は、金持ちになったとしても、子供のために働くのをやめない。

  • 4 、人はお金のために働くのであり、お金があれば自分の夢を実現しようとする。

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